広告写真の撮り方
広告撮影の現場より
撮影ジャンルの呼び方は様々で、フード・食品関係の撮影の中でも、
調理された料理を撮影する料理撮影・調理撮影
(飲食店での調理メニュー撮影も含みます。)
食品の素材を撮影する、食材撮影、食品撮影、素材撮影(肉、魚、野菜、果物)
焼き立て、揚げたて、煮立て、茹でたて、冷たさを表現する、シズル撮影・イメージ撮影。
アルコールや、飲料水、ジュースなどは、あまり呼びませんが、ドリンク撮影と呼んでます。
また食品によっては、梱包の袋や箱のパッケージ撮影もします。
食品カタログ一冊を撮影するような、料理撮影になると、パッケージ撮影用のセットと食材と料理撮影用のセットを2~3セットを作って、数日を要する、連日撮影となります。
食材・食品・パッケージを管理する商品管理スタッフも専門のスタッフを1名から2名用意しておかないと、商品が何が何だか分からない状態になるので、必要な人材です。
調理や盛り付けをする、フードコーディネーターは効率良く、料理・食品撮影を進行させるために必須なスタッフです。フードコーディネーターが上手いかどうかで、その撮影が成功するかの大きな要点となります。(フォトグラファーはフードコーディネーターとの、協力、話し合いが、常に必要です)
撮影内容次第では、フォトグラファーのみで撮影する事もあります。(料理ブロガーさんなどは、すべて1人でこなすのでしょう)
パッケージ撮影など、調理も単純でコーディネートも複雑では無い撮影物は、「まあ、1人でもなんとかなるか」と1人でも撮影します。ただ、大量なカットの撮影は出来ませんね。
精度・効率を上げるために専門職があると考えると、料理撮影の専門家であるフードコーディネーターは必要不可欠です。
フードさん(通常はこう呼びます)の仕事は料理を作るだけではなく、打ち合わせから始まり、商品・食材に合わせた料理・メニュー・レシピの考案、食材の集めから、食器・カテラリー・テーブルウェア・家具に至るまでの、撮影コーディネートも含まれます。(フォトグラアーがコーディネートをする時もあります)
最終的なレイアウト、レンズと光を計算した絵作りはフォトグラファーの専門なので、細かい位置はフォトグラファーが動かす事が多く、フードコーディネーターには、料理の見え方、盛り付け・配置に力を尽くしてもらいます。
常にカメラを通した同じ目線で作業をする事で、スタッフ間の意識が通じ合い、撮影現場に熱が入り、
フォトグラファーの選ぶ、目線(アングル)光(ライティング)機材・レンズ、そして意図で、料理写真は大きく、変化します。
クライアントの意図・要求に沿って、期待以上の料理写真が残せた時に、フードコーディネーターとフォトグラファーの仕事は報われて、次の仕事に向かうのです。
同じパスタの料理撮影でも、コーディネート次第で、イメージが変わりますね。
広告写真撮影 撮影でのレンズの選択について
ファッション撮影でも、フード・料理撮影、宝石、アクセサリー撮影、ムービー・CM撮影でも、最近は同じデジタル一眼DSLRが1台あれば対応出来るほどに、カメラは進化してきました。
どんなにカメラが進化しても、安価になっても、レンズだけは、あまり安価に、ならない傾向があり、高級レンズを揃えると、すぐにカメラボディーが数台買えるほどの金額になったりします。
DSLR(一眼レフカメラ)には、他の大型カメラにはないほどの、多彩なレンズが各メーカーから発売されており、初心者は、レンズを買うにも、どれから揃えたらと困る場合もあると思います。
レンズセットで販売されている、コンパクトDSLRには、18mmから50mmのズームや50mmから200mmのズームなどが付いていたりしますが、F値が暗いレンズが多く、解放絞りでもF4や5.6位のズームレンズが多く、暗い場所での撮影に不向きで、フォーカスを手前だけに合わせて背景をぼかす事も難しいものです。
ただ、写真は機材に頼らずとも、撮る人の気持ちと被写体の面白さに意味があるので、機材・レンズを追及しなくても良いフォトグラファーは沢山います。
広告・カタログ・雑誌などの撮影でも、ズームレンズしか持たないフリーランスフォトグラファーも知っています。
レンズに凝るとレンズ沼にはまって出てこれなくと言うフォトグラファーもいますし、あまりレンズに拘りすぎるのもお勧めできませんが、最低限度のレンズを所有していないと仕事に支障がきたすので、
今回は最初に、これだけは持っておきたいレンズについてお話します。
少し昔の話ですが、ハセッルブラッドが広告写真の定番カメラだった頃は、ハッセルブラッドの500CMのボディーを2台とレンズを数本、フィルムフォルダーを予備で2台もっていたものです。
どんなレンズを所有しているかは、フォトグラファーがメインに撮影している被写体によって違うのですが、
ファッションよりの人は6×6サイズのブローニフィルムカメラの標準レンズである80mm(プラナー)と中望遠の150mm(バリオゾナー)は持っていて、更に広角レンズにあたる50mm(ディスタゴン)をもっているフォトグラファーが標準的に多かったようです。150mmを諦めて120m(マクロプラナー)を使っているフォトグラファーもいました。当時はハッセルブラッドのボディーもレンズは超高価だったので、そんなに所有出来なかったのです。
過去を振り返って、フォトグラファーのレンズの選択を見てもわかるように、基本は標準レンズ、望遠レンズ、広角レンズを1本ずつは所有していました。
アシスタントだった頃の私が最初に買ったのは、標準レンズを無視して、キャノン用のタムロン社のsp90mmマクロとキャノンのFD24mmでした、90mmマクロは標準レンズの代わりにして、ポートレート用にボケ味のある写真も撮影していました。
被写体との距離が取れない(引きがない)ときは24mmを使用していて、旅行でもそのレンズを持ち歩いていた位で、広角の具合がとても良いレンズだと思っていました。
レンズを買い足していって最終的に200mmから20mmまで揃いましたが、それでも、sp90mmマクロと広角24mmは使用頻度の非常に高いレンズでタムロンのsp90mmマクロは絞り羽が壊れるまで活躍してくれました。
職業として、スタジオやロケで広告撮影やファッション撮影、フード撮影をする場合は、使うレンズは被写体に出来る限りベストなレンズを選ぶようになり、手持ちにない場合はレンタルもして撮影をするようになりましたが、
様々なフォトグラファーに会う機会も多かったので、ジャンルごと(性格にも依る)に持っているレンズに特徴がある事に気がついていて、
まずファッションよりのフォトグラファーは中望遠は良いレンズをもっていて、それ以外はズームレンズで済ます傾向が多いようです。
フードで活躍するフォトグラファーは中望遠マクロレンズとシフトレンズを持っている人が多いようです。
シフトレンズとは、アオリといって、大判カメラのようにレンズの角度を意図的に傾けるティルト操作と上下左右に移動させるシフト・ライズ・ォールが出来るレンズの事で、歪みパースをある程度軽減できて、通常では合わない部分にフォーカスを合わせたり、ボカす事が出来る特殊レンズで、一般的に所有するフォトグラファーは少ないレンズです。
フォトショップ・画像処理ソフトの進化でボケ味の操作も可能になってきましたが、レンズ操作でのボケ味やフォーカスを送る操作には、まだ敵わいものです。
シフトレンズは便利で映像・写真での、視覚効果も高いので必要なレンズですが、高価なレンズなので、全てのシフトレンズを揃えるには、結構な覚悟が必要です。(軽自動車1台買える位になります)
高価なレンズとなると筆頭に上がるのが、超望遠レンズになる、300mmF2.8や400mm500mm、望遠の200mmF2などが上がってきますが、個人のフォトグラファーで、これらを所有してる人は知ってるフォトグラファーでも、数えるほどしかいません。(たまにアマチュアでも野鳥を撮るフォトグラファーが持っていたりします、フリーランスのスポーツ写真・報道のフォトグラファーも持っていますが、新聞社や雑誌のプレス・フォトグラファーはメーカーとタイアップでレンタルしている事もあるようですね。)
ファッション撮影でも超望遠を使う事はありますが、基本的には、使う時にレンタルが通常です。(出番が多いフォトグラファーは買うのでしょうが・・・)
2015年の最近では、サードパーティー・レンズメーカーのシグマ・タムロンのレンズも安かろう悪かろうから、高品質なレンズを安価で出すようになってきました。8mmと言う超超広角レンズなども販売していて、カメラ・レンズメーカーの動きも以前とは変わってきています。(今でも、タムロンのSP90mmマクロは更に進化して良いレンズです。初代発売から25年過ぎました)
レンズについて考えたり、語ると、時間がいくらあっても足りないので、まとめに入りますが、
結論としては、趣味として、レンズを買うなら、よく撮影する被写体に合わせて、出来るだけ明るいF値の単レンズを買うと撮影が楽しくなります。まずは、必要なものを一点豪華主義でも良いのではないでしょうか。
何を撮るか分からないけど、レンズどうしようと思う人はズームレンズセットで良いと思いますが、撮影を楽しみたいなら、上記のように、マクロ撮影が可能なレンズと風景を撮るための明るい広角レンズがあると、素敵な写真が撮れるのではないかと思います。
普段はシビアなファッション撮影や商品撮影・イメージ撮影の話ですが、今回は基本のレンズ選びの雑文でした。
広告写真撮影スタジオと映像制作会社の立地・場所と環境
広告写真撮影スタジオ、映像制作会社として、業務する上での重要点、立地・場所について考えてみます。
友人のフォトグラファーと写真で食べていける都市・場所について話をした時に上がった場所は、アメリカでニューヨーックとロスアンゼルスや、フランスでパリ、イギリスでロンドン、などと、都市の名前ばかり上がってきました。最近はアジア圏も写真ビジネスが盛んですが、金額的な部分では及ばないようです。
そして最後に東京です。東京都の中でも、渋谷区、港区が圧倒的にクリエイター・フォトグラファーが集まるようで、場所柄・イメージ的な部分も後押しをして、この区域は絶賛大人気中です
光文社のフォトグラファーファイルを見ると、9割位は渋谷区・港区に住所を置いているフォトグラファーで埋まっています。ただ、その殆どは事務所のみで、スタジオスペースがあるとしても、マンションの1室を改装したような簡易なものが殆どです。都内の個人所有のスタジオを何か所も見てきましたが、マンションを改装したようなスタジオは天井が低く、光が拡散されてフラットになりやすく、使い辛い印象です。
そこで、レンタルスタジオを使いましょうとなるのですが、ここで話を20年以上前に戻します。
私がフリーランス・フォトグラファーのアシスタント(直アシ)をしている頃は、1991年のバブル経済終焉の直前の数年でした。
撮影がある時だけ、スタジオエビスや松濤スタジオ・アートプラザ1000、六本木スタジオなどをレンタルして使って撮影していて、スタジオ料金だけで軽く20万円は超え、撮影料金はその3~6倍以上の撮影で、景気の良い最後の時期を目の当たりにしていました。
その頃のフォトグラファーは撮影が、週に1~2本あれば商売繁盛のようで、撮影以外は作品整理とクライアントへの挨拶・仕上がりの確認、新規営業に回るといった感じで、フォトグラファーは7割営業だなと感じていました。
「スタジオは借りるのが当然なのか・・」と思いながら、
直アシスタントを卒業して、フォトグラファーとして、自分で撮りはじめた頃から、自社スタジオを持つ撮影プロダクション・撮影会社に外注フォトグラファーとして出入りをするようになり、自社スタジオの利便性を見て、「やっぱり自分のスタジオ、自社スタジオはいいな・・」と思うようになりました。
時間は過ぎて、バブル経済の終焉で、スポンサーの予算は絞られて、業界構造は変化して、更に撮影機材のデジタル化で激変し、そしてリーマンショックを経て、2015年現在は、白ホリゾントなど基本的なレンタル撮影スタジオは需要が減り、廃業・縮小したレンタルスタジオは数多くありました。
同じレンタルスタジオでも、レンタルハウススタジオは、バブル経済時期に建てられた豪邸が売りに出たり、競売になったものを、撮影用にリノベーションした物が増えてきていました。
3.11東北地方太平洋沖地震で都内・都内近郊に住んでいた、外国人が日本から離れて、古い洋館が沢山売りに出たと言う背景もあったようで、ハウススタジオは近年、更に増加しました。
フォトグラファー・広告写真撮影スタジオ・映像制作会社は、レンタルスタジオを使用するのが当たり前では無くなった時期から、スタジオを所有するかしないかで、大きくビジネスの形態が変わってきたと思います。
そして、写真・映像ビジネスで稼ぐための基本は、3つあります。
1.労働して、その報酬を得る(人材派遣は中間マージンで報酬を得てますね)
2.所有している物を貸したり、提供して、利益を得る(レンタルスタジオ・機材・車・小道具など)
3.考案したり、作った物を商品を販売する(写真集や、リースフォトなど版権・印税)
と大まかですが、フォトグラファー・広告写真撮影スタジオ・映像制作会社の業務には、この3つが常に含まれています。
見積もりを作ったりする場合もこれが基本の考えになっていて、この中の所有するもの、スタジオが今回の話の重要な点です。
撮影を目的としたスペースはスタジオ(他のジャンルでもスタジオと呼びますが・・)と呼ばれます。撮影スタジオの立地、広さ、利便性、管理費、人件費を計算した上でスタジオ料金が叩き出されて、レンタル料金・使用料金が決まるのですが、
スタジオ料金の相場は、スタジオの立地・場所で左右されます。港区と板橋区では同じ広さでも料金が板橋区の方が安価です。人気の場所は坪単価も高く、賃料、販売価格も人気に正比例します。
人気の場所でレンタル撮影スタジオを開設すれば、家賃も高額なので、スタジオ料金も比例して上がります。
人気の場所であれば、人が集まりやすく、使用日数、稼動日数が、不人気な場所より多くなるでしょうから、多少考慮出来るかもしれませんが、最大の使用時間は1日24時間しかありませんので、通常は回転率が30%~50%位でも売り上げが赤字にならないように、損益分岐点を設定するのが通常の経営だと思います。
東京都は練馬区から江戸川区の間が30km位で、山の手線を一周すると42.5Km位と言われています。そんなに広く感じません、むしろ狭い印象です。
ビジネス環境としては利便性が高いのは事実ですが、山の手線内に撮影スタジオを新規に作るのは、坪単価を考えると見込み収入が数年先まで見えてないと難しく感じます。
弊社スタジオ玄の設立当初は、墨田区の雑居ビルの2部屋をスタジオに改装して使っていました。
その頃はフォトグラファーは2名、スタイリスト1名、マネージャー1名でしたが、撮影の受注が増えて、スタジオが手狭になり、同じビル内に追加で1部屋を借りて、フォトグラファーも3名増えました。
ギリギリの広さと環境で撮影をしてきましたが、スペース不足による効率の悪さを解消するため、50坪弱だったスタジオから、同じ墨田区の150坪の倉庫に移転して、現在のスタジオのメインスペースにもなっている、スタジオpart1を開設しました。
山の手線内も考慮しましたが、当時、都営大江戸線が開通予定で大江戸線と都営新宿線の森下が徒歩3~4分と近く、JR両国にも11分弱で立地も悪くないと判断しました。
スタジオが広くなり、当然のように家賃も高くなりましたが、山の手線内ほどは坪単価が高くはありません。その差はスタジオ料金に還元していて、通常の撮影プロダクションの見積もりは撮影料金か撮影スタッフ料金にスタジオ料金、機材料金、小道具料金などが加算されます。
スタジオ料金は1時間単位、1日単位など、計算は撮影プロダクション、撮影会社によって、また案件で違うものですが、
弊社では、スタジオ料金の基本設定は時間単位では計算しません、基本は撮影料金の20%としています。
自社スタジオでなければ、出来ない計算・設定で、クライアント目線で見れば分かり易く、段取りやトラブルで1時間押したりしても、スタジオ料金が加算されないので安心です。
墨田区の坪単価は2015年現在で平均50万円前後ですが、港区・渋谷区は260万円前後となっていて、5倍の差です。6畳の部屋が30畳になるので、スタジオ料金も5分の1位になっていると解釈してもいいのかもしれません。(一般の住居の賃貸料だとそこまで還元されてはいませんが・・)
港区の六本木から弊社近くの大江戸線森下までは、地下鉄で22分です。地下鉄・電車で22分の差で坪単価が5分の1になるのは、田舎では信じられない事かもしれませんが、東京都や世界の都市では、同じような事がみられます。
パリやニューヨークでは、治安などに不安があり、同じ距離間で港区と墨田区を例えれば、港区がセレブの住宅地として、墨田区はスラム街のような立地になりますが、墨田区はまだセレブな町の部類に入る方で、これ以上は差別になるので、地名・区域は書けませんが、少なくとも、大江戸線沿線は治安は悪くありませんし、利便線も高いと思います。
今後、豊洲まで半蔵門線が開通予定である事や、江戸東京博物館と東京都近代美術館を中心にアートと伝統のイベント・行事も盛んです。江東区と墨田区は今後、更に成長する地域だと思います。
不動産会社の営業トークのような話になりましたが、広告写真撮影スタジオと映像制作会社の立地と利便性についての話はここまで。
商品撮影 単品撮影と集合撮影の配置とライティング
上記の写真はグラスの角版・集合撮影ですが、商品撮影には、単純なカテゴリー3つがあります。
単品撮影は商品を単体で撮影する事。
切り抜き撮影は、撮影した単品撮影・集合撮影の画像を切り抜き易く撮影する事で、写真・画面の中に、映り込みをカバーする為の黒い紙や仕掛けなどが写っている事の多い写真・画像の撮影です。
切り抜きは撮影時に切り抜きする訳ではなく、撮影後にパスツールを使って切り抜いて、イラストレーターなどでデザインに貼り付けます。商品単品撮影の殆どは切り抜き用に撮影しています。
切り抜きせずに、トリミングのみで白やグレーの余白を生かして、使う方法は角版撮影・角版使用と呼ばれます。イメージ撮影や背景を生かした撮影も角版使用と呼ばれ、略して「角」と呼んでます
単品撮影は商品を見せる角度・向き・アングルを注意して撮影していきますが、広告写真を撮りなれてないフォトグラファーやアマチュアが難しいと感じる撮影が「集合撮影」「まとめ撮り」と呼ばれる、カラーバリエーションをまとめて撮影したり、部品パーツをまとめて撮影する事、器や食器、カテラリー、調理器具などをまとめて撮影する、カタログやチラシなどで見られる広告撮影方法です。
集合撮影と呼ぶことにしていますが、呼び方は業者によって変わるかもしれませんね。
この集合撮影の撮り方について、考えてみます。
物が2つ以上あれば集合・まとめ撮影になる訳ですが、2つになった時点で選択する事がいくつか発生します。簡単には物と物と、お互いにつけて撮影するか、離して撮影するかですが、デザイン次第なので、どちらが良いとも言えない事です。
以前、フォトグラファーで駆け出しの頃、撮影と切り抜き、レイアウトをする仕事をしていた時期があり、自分で撮影して、現像して、リサイズしてプリントして、ハサミで余白を切って、フィルムに貼りつける作業をしていた頃がありました。
今から、約20年前はアナログだったので、切り抜きは職人的な仕事でしたが、マックとフォトショップ、イラストレーター、クオークエキスプレスの登場で、そんなアナログのデザインの現場は劇的といっていいほどの変化があり、昨日まで使っていた、製版カメラも、引き伸ばし機も、フィルムも必要なくなり、ハサミはパスツールに変わり、引き伸ばし機はフォトショップの拡大縮小リサイズで済むようになりました。
アナログな機材が必要なくなって、デジタルなソフトとハードで撮影もデザインも進行して、クリーンでスピーディーな現場になりましたが、
写真撮影の基本的な部分は何も変わっておらず、集合写真、まとめ写真の撮り方は当時のフォトグラファー・デザイナーから学んでいて、その基本は今も普遍的なルールとして撮影に生きています。
難しいノスタルジーな話はここまで、
集合写真でルールとしている基本を述べてみましょう。
まずライティング
以前も触れていますが、メインライトは下手から(向かって左からのライティング)です。文字は左から読むので、左からのライティングの方が、一般的に馴染むためです。それにトップライトを入れて全体をライティングするのが基本的なライティングです。
集合の配置の仕方は、商品によって多少変わりますが、基本的な部分を説明すると、
高さのあるもの大きい物は上手(向かって右)から配置する。奥行のある置き方なら、右奥に大きい商品を配置。(ライティングで影にならず、右上がりで見やすくなります。)
あまり隙間を作らず、まばらにならないように配置する。(写真が小さくなっても商品が1個ずつ見えるように)
商品を重ねる必要があるときは商品の7割以上は見せるようにする。
タオルやノートなど四角いものなら、角を3つは見せるようにする。
同じ商品のカラーバリエーション集合であれば、色がわかるだけで良いので、重ねて配置する。
複数の種類の商品の場合は、種類別に配置して、混ぜないようにする。
他にも注意点はありますが、基本はこれ位です。
これを基本に配置をしていくと100点の大集合でも、なんとか絵になります。(そんなに多い集合は滅多にありません・・・)
それでも、「言うは易し」で実際に配置してみると難しい集合の商品撮影もあり、
陶器の集合など、割れ物なので、気を使いますし、タオルや衣類の集合もデザインやロゴの文字など、見せる部分の位置などを考慮して配置していきます。
そして商品ではなく人物の集合でもルールがあって
人物の集合写真の場合は中心に向かって人が斜め45度位の角度で内側に向かっていくと肩がぶつからず、狭いスペースでも人がたくさん入れます。あとは身長の高い人が後方になるなどの基本的な事ですが、はずせないルールです。
商品撮影のジャンルは沢山ありますが、集合撮影は地味ながら、フォトグラファーの配置センス・美的感覚が問われる広告撮影ですね。(スタイリスト・デコレーターがやってくれる場合もありますが・・)
広告写真の基本を大切にして、商品撮影の高みを目指したいですね。
カタログ・チラシの大量な商品撮影をするには
WEBカタログ・印刷のカタログ・カタログショッピング・商品パンフレットなど、世の中に売る商品があるだけ、商品写真が必要になりますね。
特にカタログショッピングやWEBショッピングでは、写真や動画だけで商品を判断して、実際の商品に触れずに購入する事もあるので、特徴をとらえて、商品を綺麗に価格以上の価値観を見いだせるように撮影する事は重要課題ですが、
膨大なギフトカタログや通販カタログの撮影点数になると、商品アイテムも1000点を超える場合もあり、撮影が雑になるのではないかと心配もしたりします。
大量に撮影があっても、雑にならず、一点ずつ丁寧に撮影するためには、段取り、計画が必要ですね。「千里の道も一歩から」と言いますが、1000カットの撮影も1カット目を撮影する前の段取りが、撮影のクオリティーとスピード、そしてコストダウンにつながります。
カタログ通販などの撮影が始まるまでには、商品の特長を説明するオリエンテーリングをして、その情報を元にデザイナー・コピーライターがデザイン案・ラフを制作します。ラフデザインにメーカーの保持している、メーカーポジ・メーカー画像を入れ込んで、足りない写真と、撮り直した方が良い写真を決めて、撮影会議、打ち合わせをして、撮影日を迎える事になるのが、簡単な流れです。
撮影点数、商品アイテムが100以上位になると、商品管理者が必要になる事もあります。商管と呼んでいる職業ですが、商品管理と撮影進行だけで、業務を成り立たせている会社が何社もあるほどで、大量な撮影点数の現場では、重要な役割を果たす仕事です。
香盤表と言う撮影スケジュールを制作する事にも、商品管理は必要になります。
商品点数が多いとスケジュール通りに商品が届かない場合もあり、その分撮影に負担がかかる場合もあります。
大量に撮影をするには、全ての商品を理解した上で、撮影の方法が同じ物、同じようなセッティングで撮影出来る商品をまとめて撮影する事が必要です。
撮影1点毎にライティング・セッティンング・場所が変わっていたら、いたずらに時間を浪費する事になります。
同じシーンで撮れる商品・同じセットで撮影出来るキリヌキカットの商品・同じ角版で撮影出来る商品・大きい商品・俯瞰撮影の商品
時計などのアクセサリーの商品・食品関係の調理が必要な商品など、まとめて、香盤を制作して、撮影の段取りをします。
撮影するフォトグラファーとスタイリスト、必要に応じてアシスタントを撮影の1チームとして、
1チームが撮影可能なカット数を過不足なく計算して、撮影日数と撮影チームの数を調整しますが、通常、撮影日数は決まっているので、日数に合わせてチーム数を計算します。
可能なカット数は過去の撮影実績と経験で計算するのですが、アクセサリーのイメージなら、1日30カット位が目安だったり、モデルでのロケ撮影なら、通常20~30カット位、スタジオでのアパレル商品の置き撮り、吊るし、貼りつけの撮影なら、60カット位と、商品によって難易度が変わるので、色々な撮影を経験したフォトグラファーが商品を見て判断すると無駄がありません。
チーム数が多くなると、撮影した画像のクオリティーチェックや統一感、ページ配置での写真の見え方などを管理するディレクターも必要となります。アートディレクターとも呼びますが、デザイナーがやったり、フォトグラファーがやったりと、ビジュアルの決定に責任を取れる人材がアートディレクター(AD)を担当します。写真の場合はフォトディレクターと言う呼び方もありますね。ディレクター不在で、ディレクションが決まらずに撮影をすると、撮影しながらの試行錯誤や撮り直しなど多く、無駄な進行になりがちです。
人材が確保出来たら、撮影と商品管理をする場所を決めます。
十分な広さを社内で用意出来れば問題ないのですが、出来ない場合は、大型倉庫を借りて、撮影と商品管理を同じフラットな場所で進めるのも効率的です。費用はかかりますが、人の動きが、横だけの動きになったりと利点は大きいものです。
倉庫を利用した撮影スタジオが多いのも、うなづけます。
撮影環境は非常に重要な事で、見積もり料金が安いからと、小さなスタジオで撮影を進めたりすると、撮影が徹夜続きでも終わらず、商品管理もスペース不足でミスが多く、当然のごとく撮影クオリティーも落ちてゆく、苦行のような撮影現場もあるようです。
スペースの確保ができたら、撮影になります。
撮影が始まったら、香盤通りに進めるだけですが、予定通り商品が届かなかったり、ギリギリで掲載商品が変更になったり、売りたい商品の色が変わったりと、撮影中でも修正する事はたくさんあります。
短い期間で3日間、長い期間で1か月を撮影した事がありますが、撮影点数が多いと撮影後の変更や商品の見せ方の変更での撮り直し、レタッチ修正など、また数日間の予備日を要します。
色校など数回の手直しをして、デザイン校正・印刷が終わり、印刷物、データが納品されて、しばらくして、売上に効果が出た時に初めて、長期間のカタログ通販、WEB通販等の撮影業務が終了します。
仕上がりの評価・売上が良ければ、次のシーズン・次号の撮影が受注できる可能性は高くなり、結果を出し続ければ、毎号・レギュラーの撮影となります。
大規模なカタログ撮影の依頼でも、通年で契約する事は殆どないので、毎回の撮影に改善点を探して、ブラッシュアップしていく必要があり、気を抜く事は出来ません。
カタログ撮影やWEB販売撮影・通販撮影を続ける行く事は、細かな注意と商品を綺麗に分かり易く撮る気持ちを、連続して持ちつづける事が大切だと思っています。
そして、雰囲気良く、楽しく撮り続けたいものです。
今回はここまで。
スマートフォンの普及で、2017年の現在で日本国内の2人に1人はインターネットを毎日使用しているそうです。私も毎日、メールやSNS(ソーシャル・ネットワーキング)・サービス、ショッピング、検索などで使っています。
1980年代から1990年代にパソコン通信のメインとなっていたニフティサーブなどのBBSや掲示板があった頃から、進化を続けて、現在のSNSと呼ばれる形態になってきました。
職業・所属・学歴・家族構成などを、ネット上に制限無しで公開している人も多くいるようですね。SNSが始まる前は、そんなことをするのは、芸能人・有名人位のものかと思っていましたが、スマートフォンの普及で世の中も大きく変化しました。ブログだけで月に数千万稼ぐブロガー、映像配信で現在平均年収740万円位の広告収入などを得るyoutuber(ユーチューバーとカタカナで書くと読み辛いです)と呼ばれる職業の登場(億単位を稼ぐ人も存在しますね)。
20年前には、こんな職業があるとは思えなかった。ゲームで賞金を稼ぐプロゲーマーなども存在しています。
今後の20年は極端に言えば、新聞の印刷が無くなり(すでに減っていますが、限りなく0に減る)、テレビ放送は第2のメディアになって(テレビCMの価値が下がる)民営放送局の合併もあるかもしれません、映像配信サービスやスマートフォンと連動するのが当たり前の各種サービスやビジネスが主流になり、(すでになっているとも言えますが、スマートフォンと言う呼び方も無いかも。)液晶が進化したペーパー液晶も実用化されて、教科書や雑誌の在り方も変わり、グーグルグラスのようなバーチャルなガジェットが普及しているものだと予想できます。通信も進化して、今の10倍は速度、通信料が増えて、電波を使う事も、電波塔や設備の維持を考えると、電波は非常通信用にしか使用されないかもしれません。
現在も液晶モニター・LED掲示板を使用した広告のシステムが確立され、キャンペーンの方法など即時に変更が出来るリアルタイムな広告に変わってきています。
私がよく行く駅の改札広告は、毎日広告の内容が変わっています。
時間によってターゲットを変えた広告ポスターを液晶モニターに表示しているのでしょうか?
電車の中でもトレインチャンネルなど動画コンテンツを毎日のように見ています。いつからか吊り革も広告媒体になり、新しい広告が目立っていますが、印刷物を車両に吊るす、中吊り広告は今だメインの座を守っているようです。(大体あれで発売される雑誌の内容を把握できますね)
印刷、映像、音声などのメディアの変化で、職業も変化します。様々なメディアが新しいメディアに吸収され飲み込まれて、新たなメディアが確立されて、デジタルコンテンツや動画コンテンツなどのワードも良く聞くようになりました。(看板がサイネージと呼ばれたり、呼び方を変えているだけですが)
映像・写真の撮影は20年前と変化があったかと言うと、機材の進化で、暗い場所でも綺麗に撮影が可能になったり、機材の軽量化でドローンのような新たな空撮機材の登場や、HDR(ハイダイナミックレンジ)でハイライトやシャドーがコントロールしやすくなった事、そして手振れを極限まで抑えて、滑らかに撮影が可能なジンバルやスタビライザーなど、4K/8Kムービー撮影など、進化は普段見てる、CM・ドラマ・映画などに、現れています。またバーチャル映像やCGのソフト(mayaなど)制作ツールとして、スタンダードなものとなってきました。 約30年前に車の撮影でレスポンス処理(画像処理をこう呼んでいました。)をしたいた時に想像していた世界にいる訳ですが、さほど自分は成長していませんね。それでも現役フォトグラファーとして、長生きはしたいものだと思うのです。
この先は更に、軽量化、高画質・高音質化、高機能化するのは想像がつきます。画像処理ソフトやプロの使うソフトは難しいほど自由なものが作れる、難解で自由なものでしたが、分かり易いインターフェースで直観的に使えるものも登場してくるでしょう。
人が生き続ける限り、ものごとは進み続けて、シンプルになったり、また複雑にもなります。そして淘汰されて、また進化して、現在の職業に対する考え方も変わります。
30年前まではフォトグラファーは花形職業に入るような職業でしたが、
今では、はっきり言って不人気職業です。完全実力世界の好きな人しか続けらない職業になりました。
映像を自らの表現として、クライアントに求められる映像・写真を制作出来るフォトグラファー・シネマトグラファーが、大手に広告代理店とクライアントに求められるのは、今も昔も普遍的な事です。
プロフェッショナル・職人として、商品などのイメージを撮影するフォトグラファーが求められる分野も大半を占めています。
様々な分野で求められる撮影するのが、広告写真・広告映像だとして、
youtuberなような、沢山動画コンテンツを再生される事を望んで動画制作をする人たちは、アーティストと呼ぶのでしょうか。(やっぱyoutuberとしか呼べないか) 子供も大人も国籍も関係なく、稼ぐ事が出来るyoutuberの登場は
個人が組織である、放送局を凌駕する可能性を感じさせる大きな変化です。
私自身もyoutubeに動画コンテンツをアップしていて、再生回数はあまり伸びていませんが、海外の知らない人が何人も、再生しているのは、面白いものです。これが何万人となるとビジネスになるのだから、目指す人が多いのも自然な事です。
youtubeなどで冒頭のCMを数秒でスキップ出来るようになっていますが、スキップする人が大半をしめていると思います。
スキップされる事を想定して5秒程で十分伝わるCMやメッセージが必要で、そう作られるのが当たり前になるのでしょう。
映像・写真のビジネスとして写真ブログや動画コンテンツ制作は、時代で時流で変化していくもので、変化について行くのではなく、変化を造っていく姿勢が大切なのだろうと思うのです。
かなりの雑文になりましたが、今回はここまで。