広告写真の撮り方
ファッションモデル撮影の表現方法と商品撮影のライティングと色温度
スタジオ玄では、ファッションモデルを使用したアパレルブランドの撮影、カタログ、Eコマースの撮影サービスをしています。今回はそんなお話しです。
アパレル・ファッションメーカーなどの広告写真でファッションモデル撮影や商品撮影をスタジオで撮影する場合のライティング・色温度について、お話します。
モデル撮影での一般的なライティングは傘・アンブレラのバウンズライティングとトレーシングペーパーやアートトレーシングペーパーのディフューズ・透過を組み合わせた、傘バンとトレペディフューズなどと呼ばれるライティングがメインになる事が多いようです。
最近では、柔らかい光質を求めるため、アンブレラバウンズを更に、レフ版に当てる方法で、バウンズした光を更にバウンズして、そのバウンズした光を更にトレペでディフューズ(透過)するなど、2重バウンズしてディフューズするといった、軟調でソフトな照明・ライティングが、この数年、雑誌や広告で目立つようになりました。
トレペを3重に垂らして撮影するのが、通常のライティングと言うスタイルのフォトグラファーもいて、個性・自分らしさをライティングに求めるフォトグラファーは多いのだと思います。
特にモデル撮影やフード撮影に見られるようで、柔らかく、ハイライトが無いようなライティングをして、人が自然に普段から目で見ているような雰囲気の状態を作り、日常的な光と質感を求める照明・ライティングです。
よく雑誌っぽい感じのライトでと言われると、意図的に当てているように感じさせないライティングだと解釈できる事が多いようですね。
広告写真の商品写真に、あるようなメリハリのあるライティングと対峙するような表現だと思います。
どちらも照明での表現の種類なので、商品やデザインで照明のバランスは変わるものですが、ライティングで重要なのは、そのバランスを撮影時にコントロール出来ている事だと思います。
モデル撮影でも、料理・フード撮影でも、商品撮影・ジュエリー・宝石撮影でも、照明・ライティングで、ストロボや自然光、タングステン光、LED電球、蛍光灯などを使用します。
デジタルカメラの撮影になってから、あらゆる光源での撮影が可能になりました、カメラで光源に合わせたホワイトバランスが自由に設定出来るようになって、フィルムで撮影していた頃のように、フィルムの種類とフィルターワークが不要になり、感剤費などの消耗品の費用は浮きましたが、その分の費用がデジタル機器・ハードやソフトにかかり、作業時間も増加しました。
カメラでホワイトバランスが取れるようになっても、ライトの光源が数種類混ざったり、自然光と照明が混ざった場合は、どちらかの照明を基本としてホワイトバランスを取る必要があり、通常は被写体に当たっている光に合わせてホワイトバランスを取ります。
色温度(color temperature)に合わせて撮影出来るようにする事を、ホワイトバランスを取得すると言い、元々は放送・業務でのビデオ・ムービー撮影現場で白いボードを使い色温度を取っていた事から、スチールがデジタル化したときに同様にホワイトバランスと言う言葉を使うようになりました。
色温度は、青紫色光と赤色光のバランスの状態を、数値的に示したもので、高ければ青くなり、低ければ赤くなります。夜空に輝く星も、赤い星から青白い星まで、沢山の種類がありますが、星がそう見えるのも色温度のためです。(おおまかですが)
ケルビン(K)と言う単位を使い、0から10,000の範囲で数値化します。
実際には2000Kから8000K位の数値が使われます。
日の出や日没は2000K位で
太陽光の直射日光で5000K位
晴天の日陰でで8000K位 になります。
温度と言う言葉がついていても、普通の気温には関係ないので、色温度は高くなればなるほど、青く寒い感じなるのです。
色温度を理解することはライティングや写真撮影する上で、絵作りや技術を突き詰めていくと、とても重要な事になると思います。
スチール撮影では、18%反射率のニュートラルグレーのグレーカードと呼ばれるA4サイズほどのカードを使う事が多く、殆どの撮影はグレーカードを撮影時に被写体の前に写し込んで、現像ソフトでホワイトバランスを取ります。
カメラ本体でもホワイトバランスは取れますが、現像ソフトでも調整したほうが更に正確な色再現が出来ます。
ストロボを多灯ライティング(2灯以上)でライティングする場合はストロボのヘッドの発光チューブにより、色温度が100から200度の差が出たりするので、ストロボヘッド1灯ごとに、色温度を測り、調整する必要が生じます。
色温度100Kの差は6000K位ではあまり差を感じないのですが、(プロフェッショナルは分かると思います)3000K位の色温度では、100Kの差でも見て分かるようになり、低ければ差が目立ち、高くなれば目立たない現象がありますが、
ストロボの発光するワット数(パワー)を変えた場合も色温度が変化するので、高い色温度でのライティングでも調整したほうが発色は綺麗になります。
照明・ライティングの条件が変わっても色温度は変化します。
傘・アンブレラにバウンズすると、アンブレラの白い部分の色の影響により、色温度は変化します。
アンブレラは傘トレやトレペディフューズを意識してある程度、色温度が落ちないように、白がブルーっぽくなっている物もありますが、長く使い続けるとライトで焼けてアンバーっぽくなってきます。そうなると交換になるのですが、交換すると、古い物と比べて差が出てしまうので、レフやアンブレラはある程度したらまとめて交換する事をお勧めします。(色温度調整が楽になります。)
メインライトがアンブレラバウンズ+トレペディフューズで、
トップライトがアンブレラバウンズのみ、
キャッチライトにソフトボックス
バックライトにヘッド直のライティングなど、
4種類の照明方法が混ざると色温度も各光源で変わるので、モデル撮影の場合だと、モデルに右から当たる照明は適正でトップから当たる照明は少し青く、バックから当たる光はもっと青く、正面から当たるキャッチライトは少し赤いなどと、色のバランスの悪い写真が撮影されます。
現像ソフトで色温度のバランスが悪くなったものを修整しようとしても、光は混ざりあった部分と直接当たる部分など、角度・反射が変わるので、色調整は困難なものになります。
撮影意図として、各照明の色温度の差異があるのは良いのですが、意図していないのであれば、各照明・灯体の色温度に差異がるのは、撮影をコントロール出来てないとも解釈できます。
照明の灯体ごとに補正をする必要がある場合は、各灯体のリフレクターなどに、ライトにフィルターを付けて補正する必要があります。コンバージョンフィルターと呼ばれる、色温度を調整する目的で作られたもので、映画や放送のムービー撮影では、よく使用されているもので、色温度を細かく調整するために使われるもので、B-1からB-6は、色温度を上げて、A-1からA-5は色温度を下げるために使用します。
撮影現場では、上記のコンバージョンフィルターを1cmから3cmほどの幅で細長く切って、ライトのリフレクターや、ボックスのディフューザーなどにテープで張って、色温度を調整しています。
フィルター1本で色温度が100K分・50K分と太さを調整すると使い易いです。
詳細に色温度を測る事はカメラ単体では不可能なため、カラーメーターを使用します。カラーメーターは10K単位で色温度を入射式で計るものが一般的で、写真・映像用のカラーメーターは現在、セコニック、ケンコー・トキナーから発売されているものが使われています。
フィルムで撮影していた時期は、ミノルタのメーターがメインでしたが、ミノルタがコニカミノルタフォトイメージングに合併し、2011年に解散した経緯で、ミノルタのメーターは販売されなくなりましたが、
本来、大切に使えば長持ちする機材なので、オークションなどでは、現在も結構な高値で取引されています。(ケンコー・トキナーで修理を受け付けてくれる機種もあるため)
カラーメーターは10万円から17万円ほどする機材なので、レンズやストロボに費用を回して、カラーメーターまでは手が出ないと言うフォトグラファーも多いのですが、カラーメーターを使っているフォトグラファーは、一度使ったら手放せないと言うほどで、色彩を忠実に再現させるのに、必須の機材です。
各灯体の色温度を調整した映像・写真と、調整していないものを比べると、色のヌケの良さに違いが出てきます。
そして、色温度が調整されていない光源で撮影された映像・写真は、少し濁ったような印象を受ける事があり、ヌケの悪い写真になりがちで、現像ソフト・レタッチソフトを使用しても、完全な補正は難しく、不可能な場合も多いので、事前の色温度管理は、必須です。
色温度管理は、ファッション・モデル撮影での、モデルの肌の色、服の色、フード・料理撮影での、食材・料理の色に深く関係し、影響を与えます。
カラーメーターを使いこなす事は、広告・雑誌・営業写真など、フォトグラファーのジャンルを問わずに必須な事でしょう。
デジタル撮影でホワイトバランス調整が楽になった撮影現場には、カラーメーターを使用する光景は見なくなってきて、ストロボメーター・露出計も使用しないフォトグラファーも増えています(撮ればすぐに適正露出かどうか見れるから・・ですが、ライトバランスは計らないと正確には出せません)
各灯体の出力・明るさを数値で把握して、色温度調整・管理する事は、ワンランク上の撮影(普通なのですが・・)をするための基本条件です。
ファッション撮影でも、商品撮影でも、露出・色温度管理の基本は大切と言う事で、ヌケの良い発色の映像・写真を撮りたいものです。
今回はここまで。
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