広告写真の撮り方
広告写真撮影スタジオと映像制作会社の立地・場所と環境
広告写真撮影スタジオ、映像制作会社として、業務する上での重要点、立地・場所について考えてみます。
友人のフォトグラファーと写真で食べていける都市・場所について話をした時に上がった場所は、アメリカでニューヨーックとロスアンゼルスや、フランスでパリ、イギリスでロンドン、などと、都市の名前ばかり上がってきました。最近はアジア圏も写真ビジネスが盛んですが、金額的な部分では及ばないようです。
そして最後に東京です。東京都の中でも、渋谷区、港区が圧倒的にクリエイター・フォトグラファーが集まるようで、場所柄・イメージ的な部分も後押しをして、この区域は絶賛大人気中です
光文社のフォトグラファーファイルを見ると、9割位は渋谷区・港区に住所を置いているフォトグラファーで埋まっています。ただ、その殆どは事務所のみで、スタジオスペースがあるとしても、マンションの1室を改装したような簡易なものが殆どです。都内の個人所有のスタジオを何か所も見てきましたが、マンションを改装したようなスタジオは天井が低く、光が拡散されてフラットになりやすく、使い辛い印象です。
そこで、レンタルスタジオを使いましょうとなるのですが、ここで話を20年以上前に戻します。
私がフリーランス・フォトグラファーのアシスタント(直アシ)をしている頃は、1991年のバブル経済終焉の直前の数年でした。
撮影がある時だけ、スタジオエビスや松濤スタジオ・アートプラザ1000、六本木スタジオなどをレンタルして使って撮影していて、スタジオ料金だけで軽く20万円は超え、撮影料金はその3~6倍以上の撮影で、景気の良い最後の時期を目の当たりにしていました。
その頃のフォトグラファーは撮影が、週に1~2本あれば商売繁盛のようで、撮影以外は作品整理とクライアントへの挨拶・仕上がりの確認、新規営業に回るといった感じで、フォトグラファーは7割営業だなと感じていました。
「スタジオは借りるのが当然なのか・・」と思いながら、
直アシスタントを卒業して、フォトグラファーとして、自分で撮りはじめた頃から、自社スタジオを持つ撮影プロダクション・撮影会社に外注フォトグラファーとして出入りをするようになり、自社スタジオの利便性を見て、「やっぱり自分のスタジオ、自社スタジオはいいな・・」と思うようになりました。
時間は過ぎて、バブル経済の終焉で、スポンサーの予算は絞られて、業界構造は変化して、更に撮影機材のデジタル化で激変し、そしてリーマンショックを経て、2015年現在は、白ホリゾントなど基本的なレンタル撮影スタジオは需要が減り、廃業・縮小したレンタルスタジオは数多くありました。
同じレンタルスタジオでも、レンタルハウススタジオは、バブル経済時期に建てられた豪邸が売りに出たり、競売になったものを、撮影用にリノベーションした物が増えてきていました。
3.11東北地方太平洋沖地震で都内・都内近郊に住んでいた、外国人が日本から離れて、古い洋館が沢山売りに出たと言う背景もあったようで、ハウススタジオは近年、更に増加しました。
フォトグラファー・広告写真撮影スタジオ・映像制作会社は、レンタルスタジオを使用するのが当たり前では無くなった時期から、スタジオを所有するかしないかで、大きくビジネスの形態が変わってきたと思います。
そして、写真・映像ビジネスで稼ぐための基本は、3つあります。
1.労働して、その報酬を得る(人材派遣は中間マージンで報酬を得てますね)
2.所有している物を貸したり、提供して、利益を得る(レンタルスタジオ・機材・車・小道具など)
3.考案したり、作った物を商品を販売する(写真集や、リースフォトなど版権・印税)
と大まかですが、フォトグラファー・広告写真撮影スタジオ・映像制作会社の業務には、この3つが常に含まれています。
見積もりを作ったりする場合もこれが基本の考えになっていて、この中の所有するもの、スタジオが今回の話の重要な点です。
撮影を目的としたスペースはスタジオ(他のジャンルでもスタジオと呼びますが・・)と呼ばれます。撮影スタジオの立地、広さ、利便性、管理費、人件費を計算した上でスタジオ料金が叩き出されて、レンタル料金・使用料金が決まるのですが、
スタジオ料金の相場は、スタジオの立地・場所で左右されます。港区と板橋区では同じ広さでも料金が板橋区の方が安価です。人気の場所は坪単価も高く、賃料、販売価格も人気に正比例します。
人気の場所でレンタル撮影スタジオを開設すれば、家賃も高額なので、スタジオ料金も比例して上がります。
人気の場所であれば、人が集まりやすく、使用日数、稼動日数が、不人気な場所より多くなるでしょうから、多少考慮出来るかもしれませんが、最大の使用時間は1日24時間しかありませんので、通常は回転率が30%~50%位でも売り上げが赤字にならないように、損益分岐点を設定するのが通常の経営だと思います。
東京都は練馬区から江戸川区の間が30km位で、山の手線を一周すると42.5Km位と言われています。そんなに広く感じません、むしろ狭い印象です。
ビジネス環境としては利便性が高いのは事実ですが、山の手線内に撮影スタジオを新規に作るのは、坪単価を考えると見込み収入が数年先まで見えてないと難しく感じます。
弊社スタジオ玄の設立当初は、墨田区の雑居ビルの2部屋をスタジオに改装して使っていました。
その頃はフォトグラファーは2名、スタイリスト1名、マネージャー1名でしたが、撮影の受注が増えて、スタジオが手狭になり、同じビル内に追加で1部屋を借りて、フォトグラファーも3名増えました。
ギリギリの広さと環境で撮影をしてきましたが、スペース不足による効率の悪さを解消するため、50坪弱だったスタジオから、同じ墨田区の150坪の倉庫に移転して、現在のスタジオのメインスペースにもなっている、スタジオpart1を開設しました。
山の手線内も考慮しましたが、当時、都営大江戸線が開通予定で大江戸線と都営新宿線の森下が徒歩3~4分と近く、JR両国にも11分弱で立地も悪くないと判断しました。
スタジオが広くなり、当然のように家賃も高くなりましたが、山の手線内ほどは坪単価が高くはありません。その差はスタジオ料金に還元していて、通常の撮影プロダクションの見積もりは撮影料金か撮影スタッフ料金にスタジオ料金、機材料金、小道具料金などが加算されます。
スタジオ料金は1時間単位、1日単位など、計算は撮影プロダクション、撮影会社によって、また案件で違うものですが、
弊社では、スタジオ料金の基本設定は時間単位では計算しません、基本は撮影料金の20%としています。
自社スタジオでなければ、出来ない計算・設定で、クライアント目線で見れば分かり易く、段取りやトラブルで1時間押したりしても、スタジオ料金が加算されないので安心です。
墨田区の坪単価は2015年現在で平均50万円前後ですが、港区・渋谷区は260万円前後となっていて、5倍の差です。6畳の部屋が30畳になるので、スタジオ料金も5分の1位になっていると解釈してもいいのかもしれません。(一般の住居の賃貸料だとそこまで還元されてはいませんが・・)
港区の六本木から弊社近くの大江戸線森下までは、地下鉄で22分です。地下鉄・電車で22分の差で坪単価が5分の1になるのは、田舎では信じられない事かもしれませんが、東京都や世界の都市では、同じような事がみられます。
パリやニューヨークでは、治安などに不安があり、同じ距離間で港区と墨田区を例えれば、港区がセレブの住宅地として、墨田区はスラム街のような立地になりますが、墨田区はまだセレブな町の部類に入る方で、これ以上は差別になるので、地名・区域は書けませんが、少なくとも、大江戸線沿線は治安は悪くありませんし、利便線も高いと思います。
今後、豊洲まで半蔵門線が開通予定である事や、江戸東京博物館と東京都近代美術館を中心にアートと伝統のイベント・行事も盛んです。江東区と墨田区は今後、更に成長する地域だと思います。
不動産会社の営業トークのような話になりましたが、広告写真撮影スタジオと映像制作会社の立地と利便性についての話はここまで。
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